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2015/05/10

母の日


私のお母さんは、私が物心付く前に死んでしまいました。

幼稚園に上がる頃、お父さんからお母さんが生きている時いつも身につけていたというオレンジ色のピン留めを貰いました。
お風呂に入る時と寝る時以外は肌身はなさず身につけているように言われていました。

でも、小さかった私はあまり好きではないオレンジ色のピン留めを特に気に入ることはありませんでした。
なんとなく、言われているから着けていて、母の形見という特別な意味がある物として接していませんでした。

母の七回忌の時の話です。

私は法事がとても苦手でした。退屈で、毎回抜け出してはおばあちゃんに怒られていました。その日も、
「お坊さんが来るから大人しくしていてね」
という、おばあちゃんの言葉を無視して、そっと裏の勝手口から外に出て行きました。
家を出て、少し行くと高校があります。その裏に大きな山があり、
法事を抜け出した時や、お父さんに怒られた時は決まってこの山の上に行きました。
名前はわからないけれど、春や夏には、小さな花がたくさん咲いていてとても綺麗な場所です。
私はその場所が大好きでした。
いつもは、そのままそこに立っているところを見つかって連れ戻されてしまいます。
ですが、その日は、昔住んでいた人が使っていたと思われる小さな穴倉を見つけ、
そこに隠れることにしました。
初めて入ったそこで私はとんでもないものと出会いました。

宇宙人に出会ったのです。

その山は心霊スポットとして有名だと聞いたことがありましたが、
私が出会ったそれは幽霊なんかじゃありませんでした。
頭が大きく、小さく、ビニール袋を丸めたような姿で、目はくりくりとしていて、
目下に色鮮やかな点が三つある、かわいらしい生き物でした。

私は一目見てこれは宇宙人だと思いました。宇宙人は喋れなかったけど、
一緒にキャラメルを食べたり、せまい穴倉でかけっこしたりして遊びました。

その時、どうしてそんなことをしてしまったのかわかりませんが、
私は友達の証だと言って、母の形見のオレンジ色のピン留めを宇宙人にあげてしまいました。
宇宙人は喜んで、代わりに青いかみかざりを私にくれました。

そのあと、いつの間にか眠ってしまい、私を探しに来たお父さんとおばあちゃんに見つかりました。
起きると宇宙人はいなくなっていました。
おばあちゃんは私の顔を見るなりおどろいて、ピン留めをあげてしまったと言う私をひどくしかりました。
怒られてしょんぼりする私に父は特に怒ることはなく、優しく頭をなでてから

「今度からはお母さんのそうしきにちゃんと出るんだぞ」

と言ってきました。母の形見を手放して初めて、私もお母さんのそうしきにちゃんと出ようと思いました。
お父さんにお母さんはどんな人だったかとたずねると、「天使のような人だった」と言いました。
天使のような母なら、私が宇宙人にピン留めをあげたことを怒ったりしないのではないかと思いました。
それを言うと、あまり笑わないお父さんは今まで見せたことがないような笑顔でうなずいてくれました。

母の形見のおかげで手に入れることのできた宇宙人との友情の証は今も私の宝物です。
母の日はその宝物を身につけて、いつもご飯を作ってくれるおばあちゃん、
男手一つで私を育ててくれるお父さん、
天国に行って本当の天使になったお母さん、
みんなに「ありがとう」を伝えたいです。

四年二組 篠崎夕希帆

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