haksuyubota.gif
↑押して頂けると励みになります!!

2015/12/06

いとが見えません

sdtyk2.jpg

白してきたのは向こうからで、俺は二つ返事で了承してしまった。
 
むしろ断ろうものなら周囲から大顰蹙を買ってしまうことだろう。
俺の恋人である志筑紫さんは学園中の男子に絶大な支持を得ているのだ。

頭脳明晰で、美人で、スタイルもよくって運動神経もいい。
本当にこんな人間がいるんだと初めて彼女を認識したとき驚いた。
同時に自分とは関係のない次元の人間だと思った。

そう思っていたのに。
 
本当に突然、掃除が終わり教室に戻ってる途中、
誰もいない廊下でたまたま志筑さんと出くわした。
顔を合わせたのだって、その時が初めてだった。
いわゆる『ファーストコンタクト』というやつ。
 
目の前にした志筑さんは噂通りの美人だった。
ちょっと目力が強すぎて本能的に恐怖を感じてしまったが…
そのせいもあって、不自然に目が合ってしまい、
戸惑いつつ軽く会釈し、その場を去ろうとしたとき、
不意に彼女に腕を引かれ、振り返るのと同時に「付き合ってくれ」と言われた。

えっ

唐突過ぎて、しばらく息をすることを忘れた。
初めて女子に告白されたこと、それも初対面の、学年一の美少女と、
「あなたのことよく知りませんから友達からどうですか」なんて
通俗的な言葉がパニック状態の俺の口から出てくる筈もなく、とにかく頷いた。

帰りのホームルームが終わると、志筑さんは俺の教室の前で待っていた。
そんなんだから、告白された数十分後には学校中に噂が流れてしまった。

俺と志筑さんは違うクラスだし、出身校も違う。
本当に、俺が覚えてる限りのファーストコンタクトは前述の通りだ。
仮に同じクラス等の接点があったとしても、俺を意識する女子はそういない。
 
まず顔は全然かっこよくないし、
背だって平均以下で、筋肉だってない。
成績もギリギリ赤点免れてるくらいで、運動は全体的にダメ。
クラスのムードメーカーでもなければ、リーダー的存在でもない。
特技も趣味もほとんどない。帰宅部だし。

物語でいえばモブキャラだ。
ただそこにいるだけの空気。
人数合わせ。
 
勿論、常日頃そこまで悲観的に自分を客観視しているわけではないが、
学園のマドンナに告白されてしまってからは、様々な方面から
なんでアイツが、という囁き声が聞こえてくるようで、妙な意識をしてしまう。

(どうして俺なんかと、こうして半年以上も恋人関係を結んでるんだろう)
 
こんな疑問を持ったのもつい最近。
気恥ずかしくて一度も「どうして俺に告白したの?」なんて聞けなかった。
自信が無くて、心のどこかで聞いてしまったらこの関係が
終わっちゃうんじゃないかと恐怖していたからだ。

付き合ってはいるものの、半年間、一緒に帰ること以外のことはしたことがなかった。
いつも教室の外で志筑さんが待っていて、駅まで帰る。
俺の最寄りと志筑さんの家の最寄り駅では通ってる電車が違うから、
いつも駅のホームでどちらかの電車が来るまで少ない会話を交わすくらいだった。

その内容も彼女の問いに俺が一言二言答えるだけで、味気ないもので。
 
食べ物は何が好き?とか、そろそろ期末だね、とか。
そんな会話しかしてこなかったが、その日の質問は何かいつもと違った。
 

「ねえ、君は私が何を考えてると思う?」
 

えっ
また息を吸うことを忘れそうになった。

何を考えてるか?
 
今までの話の流れを考えると、退屈だとかつまんないだとか
そういうことしか浮かばなかった。
きっと彼女は怒ってるんだ。失望してるんだ。
 
しかし、その考えはすぐに変わった。
彼女の瞳はすごく真っ直ぐに俺のことを見ていたから。
相変わらずの眼力の強さはともかく、その目は不満など訴えていなかった。
 
本当に、ただ、俺のことを見ている。
 
そうしたら余計に頭が混乱した。
なんなんだ。
なんて答えたらいいんだ。
彼女は何を考えているんだ。
その質問になんの意図が込められているんだ。
 
パニックで息を吸うことを忘れてた俺に志筑さんが触れてきた。
ポンと肩を叩かれて大きく息を吸う。
肩を落として咽ると、上からまた「わからない?」と聞かれた。
 
追い込むように聞かれた俺はそのまま浮かんだ言葉を口にした。

「意図が見えない」
 
質問の、が抜けてしまった。
修正しようと思ったが、志筑さんの表情が変わった。
彼女の目が一瞬大きく見開かれ、ふいっと視線を下に向けてしまった。
 
怒らせたか。
 
「ごめん、わかんなかった」

慌てて謝罪をすると別にいいんだよと彼女は微笑んだ。
笑った顔を見るのは初めてな気がした。
俺から何か話さなきゃと思ったら、志筑さんの乗る電車が来てしまった。
 
「じゃあまた明日」
 
軽く手を振り、さっと彼女は行ってしまった。
 
その次の日から彼女は頻繁に俺の教室に訪れるようになった。
しかも俺を困らせるようなことばかり言ったり、するようになった。
困るけど、嫌じゃないから強く言えないけど、ああ、もうやっぱり

 
意図が見えません!!
 

本当勘弁してください!

関連記事
スポンサーサイト